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2023/10/23 医療法務

クリニックの医療法務と個人情報保護法その16:個人情報を取得・利用する際の義務⑫

皆さん、こんにちは。

前回は、要配慮個人情報の取得に際し、本人の同意を得ずに取得可能な8つの例外(法定除外事由)について説明しました(詳しくはこちら)。

今回は、要配慮個人情報の取得の際に、本人の同意があるものとして取り扱って良い、2つの場面について説明したいと思います。

 

8要配慮個人情報の取得ー本人の同意があると解される場合

(1)問診票に要配慮個人情報を記入して受付に提出する場合

・例えば、患者さんが医療機関の受付等で、問診票に自分自身の身体状況や病状などを記載し、保険証とともに受診を申し出た場合、患者さんは自分の要配慮個人情報(身体状況や病状など)を含めた個人情報を医療機関等に取得されることを前提としていると考えられます。

ーしたがって、患者さんが問診票・保険証とともに受診を申し出る行為をもって、当該医療機関が当該情報を取得することについて本人の同意があったものと解されます

 

(2)紹介元の医療機関で作成された診療情報提供書を持参して提出した場合

・診療情報提供書は、紹介元の医療機関でどのように作成されたでしょうか?

ーまず、紹介元の医療機関は、問診・検査等の診療行為により、患者さんから病状等の要配慮個人情報を含む個人情報を得ることとなりますが、本人がもし同意をしなければ、診療には応じないでしょうから、診療で得られた要配慮個人情報は、その取得の際に患者さんの同意があったものと解されます(法20条2項クリア)。

ー次に、紹介元の医療機関が紹介先の診療機関宛に診療情報提供書を提供する場合は、本人の同意が無ければ、照会元から紹介状が郵送されたり自ら診療情報提供書を持参しないでしょうから、診療情報提供書は、情報提供(第三者提供)につき本人の同意が得られているものと解されます(法18条1項・法27条1項クリア)。

ーしたがって、紹介先の医療機関では、要配慮個人情報である紹介元の診療情報提供書を取得する際に、改めて本人の同意を得る必要はないものと解されます。

ーもっとも、医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンスによると、「第三者提供により個人情報を取得する場合には、提供元の法の順守状況を確認するとともに、実際に個人情報を取得する際には、当該個人情報の取得方法等を確認するよう努めなければなりません。なお、当該個人情報が適法に取得されたことが確認できない場合は、偽りその他不正の手段により取得されたものである可能性もあることから、その取得を自粛することを含め、慎重に対応することが望ましい」とされております。例えば、本人の同意がとれないまま家族のみが診療情報提供書を持参して来院した場合、本人や紹介元に確認するなどして慎重に対応することが望ましいでしょう。

ーまた、「第三者提供により他の医療・介護関係事業者から個人情報を取得したとき、当該個人情報の内容に疑義が生じた場合には、記載内容の事実に関して本人又は情報の提供を行った者に確認をとる」とされてもいます。例えば、すでに開封されていて署名捺印もされていない診療情報提供書の内容に疑義があるような場合は、照会元に確認すべきでしょう。

 

・なお、地域医療情報連携ネットワークにおいて、他の医療機関に対して照会を行い、当該他の医療機関が保存及び管理等を行う診療情報等を当該他の医療機関から直接取得する場合(当該他の医療機関が地域医療情報連携ネットワークの運営主体に対して診療情報等の保存及び管理等の取扱いを委託している場合において、当該地域医療情報連携ネットワークの運営主体を介して、当該他の利用機関に対して照会を行い、診療情報を取得する場合を含みます。)については、令和2年3月31日付厚生労働省医政局総務課「地域医療情報連携ネットワークにおける同意取得方法の例について」を参照してください(結論としては、第三者提供(=地域医療情報連携ネットワークへ診療情報提供)につき本人の同意があるものと解されます)。

 

いかがでしたでしょうか。

要配慮個人情報の取得は、原則は同意、同意が不要な例外は8つ、同意があると解される場面が2つ、というここまでの流れに気を付けてくださいね。

さて、長かったですが、今回で「個人情報」に関する義務の説明はおしまいです。

次回からは、「個人データ」に関する義務について説明したいと思います。

お楽しみに!!