2023/01/09 医療法務
クリニックの法務と個人情報保護法その6:個人情報を取得・利用する際の義務②
みなさん、あけましておめでとうございます。
今年は、去年よりもさらに分かりやすい説明を心掛けていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
さて、前回は、クリニックで患者さんの「個人情報」を取得・利用する際の義務について述べました。
「個人情報」を利用するためには、利用目的を特定し、さらに院内に掲示したり、ホームページに掲載したりするなどして利用目的を公表しなければならなかったですね(詳しくはこちら)。
今回は、「個人情報」の目的外利用について述べたいと思います。
2.利用目的による制限と適用除外事由
利用目的を特定し、公表していたとしても、目的の範囲外の利用を許してしまったら元も子もありませんね。
そこで、個人情報保護法では、クリニック等の個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならないと定めています(法18条1項)。
問題は、利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱うことができる場合があるか、です。
物事には原則と例外があるように、個人情報保護法においても、例外的に目的外利用ができる場合があります。見ていきましょう。
(1)本人の同意
法18条1項は、「あらかじめ本人の同意を得ない」とダメ、と言っています。ということは、あらかじめ本人の同意を得たならばOK、ということになりませんか?
このような解釈の仕方を、法律用語で「反対解釈」といいます。本人の同意を得たならば、本人の権利利益を侵害するおそれは低くなりますよね。なので、この反対解釈は成り立ちます。つまり、本人の同意があれば、利用目的の範囲外であっても個人情報を取り扱って良い、ということになります。
例えば、患者さんがクリニック宛に郵送した、病状と関わりのない私的な手紙を、本人の同意を得て家族に見せる場合などが考えられます。
(2)法定除外事由
個人情報保護法では、以下の通り、本人の同意が得られなくても一定の場合に「個人情報」の目的外利用が認められています(法18条3項):
一 法令に基づく場合(1号)
二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。(2号)
三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。(3号)
四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそあれがあるとき。(4号)
五 当該個人情報取扱事業者が学術研究機関等である場合であって、当該個人情報を学術研究の用に供する目的で取り扱う必要があるとき(当該個人情報を取り扱う目的の一部が学術研究目的である場合を含み、個人の権利利益を不当に侵害する恐れがある場合を除く。)。(5号)
六 学術研究機関等に個人データを提供する場合であって、当該学術研究機関等が当該個人データを学術研究目的で取り扱う必要があるとき(当該個人データを取り扱う目的の一部が学術研究目的である場合を含み、個人の権利利益を不当に侵害する恐れがある場合を除く。)。(6号)
以下、1号から6号を順を追って説明しようと思いましたが、法令に基づく場合(1号)がことのほか膨大になるため、短いですが今回はここまでにしたいと思います。
次回をお楽しみに。