ブログ

2023/06/25 医療法務

クリニックの法務と個人情報保護法その9:個人情報を取得・利用する際の義務⑤

みなさん、こんにちは。

沖縄は今日梅雨明けしたようですが、ここ、多摩地域はまだまだジメジメしとしと、梅雨が続いております。

 

さて、前回は、個人情報の目的外利用ができる例外(法定除外事由)のうち、「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」(法18条3項2号)を解説しました(くわしくはこちら)。

今回は、6つある法定除外事由(法18条3項各号)のうち、「公衆衛生の向上又は又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」(同項3号)の例について、説明していきたいと思います。

 

 

3.法定除外事由

(3)公衆衛生の向上又は又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき(3号)

・「公衆衛生の向上又というは児童の健全な育成の推進」の場合は、優越する権利利益が明確かつ合理的に認められる上、これを認めても合理的な範囲に限って取り扱われる可能性があることから、目的外利用を認めました。

・なお、「本人の同意を得ることが困難であるとき」については、こちらを参照下さい。

 

具体例を挙げましょう。

 

<具体例>

・健康増進法に基づく地域がん登録事業による国又は地方公共団体への情報提供

・がん検診の精度管理のための地方公共団体又は地方公共団体から委託を受けた検診機関に対する精密検査結果の情報提供

ーなお、個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)では、健康保険組合等の保険者等が実施する健康診断の結果等に係る情報を、健康増進施策の立案、保健事業の効果の向上、疫学調査等に利用する場合も例示されています。

 

・児童虐待事例についての関係機関との情報交換

ーなお、個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)では、児童虐待のおそれのある家庭情報を、児童相談所、警察、学校等が共有する必要がある場合等が例示されています。

ー患者さんが児童(未成年者)の場合、法定代理人(親権者)の同意を得ることで足りるのですが、児童虐待事例では、虐待を行っている親権者の同意を得ることが困難です。「児童の健全育成に特に必要な場合」にまさに該当するといえるでしょう。

 

・医療安全の向上のため、院内で発生した医療事故等に関する国、地方公共団体又は第三者機関等への情報提供のうち、氏名等の情報が含まれる場合

 

・医療機関等が以前治療を行った患者の臨床症例に係る個人データを、観察研究のためにほかの医療機関等に提供し、当該他の医療機関等を受診する不特定多数の患者に対してより優れた医療サービスを提供できるようになること等により、公衆衛生の向上に特に資する場合であって、本人の転居等により有効な連絡先を保有していないときや、同意を得るために必要な時間的余裕や費用等に照らすと同意を得ることが当該研究の遂行に支障を及ぼすおそあれがあるとき

 

・医療機関等が保有する患者の臨床症例に係る個人データを、有効な治療方法や薬剤が十分にない疾病等に関する疾病メカニズムの解明を目的とした研究のために製薬企業に提供し、その結果が広く共有・活用されていくことで、医学、薬学等の発展や医療水準の向上に寄与し、公衆衛生の向上に特に資する場合であって、本人の転居等により有効な連絡先を保有していないときや、同意を得るために必要な時間的余裕や費用等に照らすと同意を得ることが当該研究の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき

 

 

いかがでしたか。クリニックとの関係では、虐待事例が身近かもしれません。記憶の片隅にとどめておいていただけましたら幸いです。

 

次回は、第4の法定除外事由である、「国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき」について、解説したいと思います。

お楽しみに!