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2022/11/07 医療法務

クリニックの法務と個人情報保護法その2:個人情報?要配慮個人情報?個人データ?保有個人データ?

みなさん、こんにちは。

今回は、「個人情報?要配慮個人情報?個人データ?保有個人データ?」と題して、個人情報保護法で定義される法律用語のイメージをご説明します。

(クリニックの法務と個人情報保護法(その1)についてはこちら

 

突然ですが、なぜ「定義」することが必要なのでしょうか?定義することで得られる利点は何なのでしょう?

 

利点1:まず、定義することの利点の一つとして、法律の適用を受けるか受けないかを峻別できることが挙げられます。

例えば、みなさんが個人情報だ!と思っているものすべてが、必ずしも個人情報保護法で定義される「個人情報」であるとは限りません。

実は、生きている人の運転免許証は個人情報保護法の「個人情報」なのですが、亡くなった人の運転免許証は同法の「個人情報」ではないのです!

なので、基本的には生きている人の個人情報について注意すれば良い、ということになります(※)

(※)ただし、患者さんが死亡した後においても、クリニックが患者さんの情報を保存している場合には、漏えい、遺失又は毀損等の防止のため、個人情報と同等の安全管理措置を講じなければなりません。また、遺族から診療経過、診療情報の諸記録について照会が行われた場合は、「診療情報の提供等の関する指針の策定について」(平成15年9月12日医政発第0912001号)において定められている取扱いに従って、同指針の規定により遺族に対して診療情報の記録の提供を行わなければなりません(別の回で改めてご説明します)。

 

利点2:次に、定義することのもう一つの利点として、定義を重層的にすることで、「個人情報」の重要度に応じた規制が可能になり、その結果、「個人情報」の利用がスムーズになることが挙げられます。

どういうことでしょうか?以下の3つの具体例を考えましょう。

 

例1Tポイントカードの会員番号と、癌の既往歴があると記載された問診票。

いずれも「個人情報」ですが、「癌の既往歴」といったいわゆる病歴は、他人には知られたくないセンシティブな情報ですので、後者の方がより慎重に取り扱わなければならないでしょう。

このように、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪歴等が記載された「個人情報」(「要配慮個人情報」といいます)は、単なる「個人情報」の場合よりも強い規制下に置く必要があるのです。

 

例2:全く綴られておらず棚に整理もされていない患者さんの診察内容が記載された2号用紙と、1冊に綴られて棚に五十音順に整理された診療録。

2号用紙は「個人情報」ではありますが、全くもって使い勝手が良くありません。

大学時代に私が黒板を書き写したバラバラのルーズリーフのように(!)読み直そうともしないでしょうし、他人から「教えて」と言われても、どこにあるか探せず、おそらくは提供できないでしょう。

ところが、診察内容の記載された2号用紙が1冊の診療録に綴られており、さらには五十音順に棚に整理されれば、一気に利用価値が高まります。

もっとも、利用価値が高まる一方で、「この患者さんのカルテ、家に持ち帰って読み直そう」と思い、持ち帰ったところ帰りの電車で棚に置き忘れたり、情報提供したはいいけれどもうっかり別の人に提供してしまったりなど、漏えいのリスクも格段に上がります。

これでは、個人情報保護法の目的である「個人情報の有用性」ばかりを追い求めることになり、「個人の権利利益」の保護が図れません。

そこで、五十音順に整理された棚の(「個人情報データベース等」といいます)、それぞれの診療録(「個人データ」といいます)については、単なる「個人情報」の場合よりも強い規制下に置く必要があるのです。

 

例3:診療録のように誤った記載や改ざんのおそれがあるもの。

記載の誤りや改ざんのリスクを防ぐためにも、個人データのうち、診療禄のように個人情報取扱事業者(クリニック)が内容の訂正、追加、削除等の権限を有するもの(「保有個人データ」といいます)については、本人により開示、訂正、追加、削除等を請求できるようにすることで、自己の情報を本人のコントロール下に置く必要があるのです。

 

だいぶ長くなってきましたので、今回はここまでにします。

「個人情報」、「要配慮個人情報」、「個人データ」、「保有個人データ」のイメージが、ざっくりと理解できたでしょうか?

次回は、これらの用語について、改めて定義と具体例を示したいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。