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2023/08/18 医療法務

クリニックの法務と個人情報保護法その12:個人情報を取得・利用する際の義務⑧

みなさん、こんにちは。

 

前回は、個人情報の目的外利用ができる例外(法定除外事由)のうち、「当該個人情報取扱事業者が学術研究機関等である場合であって、当該個人情報を学術研究の用に供する目的で取り扱う必要があるとき」(法18条3項5号)を解説しました(くわしくはこちら)。

今回は、6つある法定除外事由(法18条3項各号)のうち、第6の法定除外事由(最後です!)である、「学術研究機関等に個人データを提供する場合であって、当該学術研究機関等が当該個人データを学術研究目的で取り扱う必要があるとき(当該個人データを取り扱う目的の一部が学術研究目的である場合を含み、個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除く。)」(法18条3項6号)について、説明していきたいと思います。

 

3.法定除外事由

(6)「学術研究機関等に個人データを提供する場合であって、当該学術研究機関等が当該個人データを学術研究目的で取り扱う必要があるとき(当該個人データを取り扱う目的の一部が学術研究目的である場合を含み、個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除く。)」(法18条3項6号)

・前回解説をした法18条3項5号も本号も、学術研究機関等が学術研究目的で取り扱う場合を対象としています。ただし、法18条3項5号は、学術研究機関等自身が個人情報を取り扱う場合であるのに対して、本号は、個人情報取扱事業者(学術研究機関等であるか否かを問いません)が学術研究機関等に対し個人データを提供する場合です(「個人情報」「個人データ」についてはこちら)。

ー例えば、クリニック等の医療機関の医師(個人情報取扱事業者)が、大学医局の研究者(学術研究機関等)が特定の疾患に関して論文を作成する必要があるときに、当該研究者から依頼を受けて、特定の疾患で通院中の患者さんたちの診療録を提供する場合、本人たちの同意をいちいち得ないでも、個人情報保護法に違反しない、ということになります。

 

・令和3年改正前の個人情報保護法では、個人情報取扱事業者による学術研究団体への個人データの提供には本人の同意を免除する規定はなかったものの、一定の配慮がされていました。しかし、個別に本人の同意を得ることには多大なコストを要することが通常であり、学術研究の発展に支障が生ずるおそれがある一方で、学術研究機関等による学術研究目的での個人データの利用は、個人の権利利益を侵害する可能性は低いと考えられます。そこで、一定の学術研究目的の場合に、本人の同意を得ないで、学術研究機関等に個人データを提供することができるよう、本号が規定されました。

 

・法18条3項1~5号は、「個人情報」(例:診療録とは独立した検査結果用紙)の「取扱い」(=取得・利用・提供等を含む概念)に関する規定である一方で、本号は、「個人データ」(例:診療録)の「提供」のみに関する規定です。したがって、学術研究機関等に「個人情報」を提供する場合であって、当該学術研究機関等が当該「個人情報」を学術研究目的で取り扱う必要があるときについては、本号が適用されません(規定に間隙が生じています)。この場合は、原則に戻り、本人の同意を得る必要があります。

 

・「当該個人データを取り扱う目的の一部が学術研究目的である場合」、「個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除く」については、法18条3項5号と同じです(詳しくはこちら)。

 

いかがでしたか。

本号及び法18条3項5号は、今回の改正で新設された規定です。クリニック等の医療機関に勤務する医師の中には、臨床研究を並行して進められている方もいらっしゃるかと思います。研究の基礎資料として当該医療機関の診療録等が必要と考えた際には、是非、この2つの規定について思い出していただければと思います(なお、学術研究目的の場合に関する規定は他にもありますので、その都度述べたいと思います)。

 

次回は、個人情報の利用のうち、特に「本人の同意」と「家族等への病状説明」について解説をしたいと思います。

お楽しみに!